単行本

ル・コルビュジエは自らの身分証明書の職業欄に「文筆業」と記しています。それほど彼にとって文章を書いて伝えることは重要なことでした。現代のように個人がたやすく情報発信することができなかった時代に、自分の考える新しい時代の住宅や都市計画について、主張を分かりやすく伝えるための手段として、彼は著書や雑誌を選んだわけです。

1920年代に発表した「300万人の現代都市計画」以降、都市計画について多くの書籍を発表し、1930年代後半から第二次世界大戦中には、戦争のせいで荒廃した都市の再開発についての提言をまとめた書籍も出版されました。

1927年の《国際連盟》コンペで不可思議な経緯で負けてしまったときには、『宮殿―住宅』を発表し、コンペの内幕を公けにすることで、古い体質のアカデミーに宣戦布告し、闘う建築家のイメージを広めました。

戦後には、自身がつくった新しい尺度「モデュロール」に関する書籍を発表し、『マルセイユのユニテ・ダビタシオン』『ロンシャンの礼拝堂』『ラ・トゥーレットの修道院』『電子の詩(1958年のブリュッセル万博《フィリップス館》で上映した映像)』といった、自身が手掛けた作品を紹介するための書籍も出版されました。

また、彼の書籍の多くは、自らがブックデザインも手掛けています。表紙を眺めることで、彼のグラフィックデザインを楽しむことができます。

『建築をめざして』
(1923年)

『レスプリ・ヌーヴォー』に掲載してきたテキストをまとめ、『レスプリ・ヌーヴォー叢書』の中の1冊として出版されたもの。新しい時代の建築について語る本書は、日本では1929年に翻訳が出版されたように、世界中で翻訳され、多くの建築家に影響を及ぼしました。