宗教建築

ロンシャンの礼拝堂

ル・コルビュジエの代表作として常に挙げられるのは《ロンシャンの礼拝堂》と《ラ・トゥーレットの修道院》でしょう。これらカトリック教会の施設をつくるとき、ル・コルビュジエは自身はキリスト教徒ではないと辞退していましたが、カトリック教会からの文化芸術の発信をすすめていたクチュリエ神父の説得もあり、設計に携わることになりました。

二つの施設で共通していることは、光と陰の効果をうまく生かして、神聖な空間を作り上げたということです。《ロンシャンの礼拝堂》では、南壁に無数に開けられた無数の開口からシャワーのように光が拡散し、上部や側面のスリットからも光が差しこみます。また北、東、西方向に明かり取りが設けられた3つの塔からは、朝と夕方の光、そして安定した北側の光が塔内部の小祭壇を照らす工夫がなされています。

《ラ・トゥーレットの修道院》は修道士たちの祈りの場であり、かつ生活のための場です。北側に位置する礼拝堂の棟には、やはりスリットからの光や「光の大砲」と名付けた大きなトップライトからの光が、光と色の効果を最大限に発揮して、「えもいわれぬ」空間を作りだしています。ル・コルビュジエにとって「太陽」こそが神聖な存在だったといえるでしょう。

実現にはいたらなかった《トランブレーの教会》《サント・ボームの洞窟教会》や、2006年にようやく竣工をみた《サン・ピエール教会》など、ル・コルビュジエはほかにもいくつかの宗教関連施設を手掛けています。