1920年代の建築

ラ・ロッシュ+ジャンヌレ邸
1920年代の中盤には、住宅を多く手がけました。プラネクス、ギエットは画家、リプシッツ、ミスチャニノフは彫刻家、テルニジアンは音楽家、というように、芸術家のためのアトリエ兼住宅を繰り返しつくっています。また、現在、ル・コルビュジエ財団本部となっている《ラ・ロッシュ+ジャンヌレ邸》のラ・ロッシュ氏は生涯ル・コルビュジエを支えたパトロンであり、絵画のコレクターとして知られており、《スタイン+ド・モンジー邸》のスタイン家も著名なコレクターでした。このように、芸術家のグループやそのコレクターたちの世界がル・コルビュジエの活動の基盤であったことが分かります。
いわゆる近代建築は、鉄やガラスといった構造そのものがファサードに表れますが、この頃のル・コルビュジエは、コンクリートの骨組みと煉瓦壁という構造を、スタッコ仕上げで平板に塗り隠しています。1920年代の彼の作品は、「白い住宅」として一括りにされがちですが、実際には壁面ごとに色を塗り分け、面ごとに違う色とすることで、角を際立たせ、機械のような精度をもった隅の鋭さを表現し、建物の輪郭をくっきりと見せる効果を上げています。凹みを極力抑えてフラットに塗装した壁面は、素材感を消し、壁厚を意識させず、軽やかでツルツルした機械のような見かけとなり、さらに色によって、各平面の違いを強調しています。薄く軽く見えるような仕上げのおかげで、塗装された面に光が反射して光る様子は、機械の美に通じると言えるでしょう。